〜結婚すれば勝ち組伝説の終焉〜

 

かつて結婚とは幸福の象徴でした。
愛するひとと結ばれ、子をなし、生きてゆくことが国民の義務であり、
正しい幸せのかたちと言わんばかりの時代がありました。
アラサーの方々はこの思想を刷り込みの如く押し付けられてきたのではないでしょうか。

ところが時代は変わり、そんなことも言っていられなくなってきました。
ライフスタイルの多様化が云々とか、離婚の増加とか、
それはもう沢山のひとがアンチテーゼを唱えてくれたので
わたしからはこれ以上、何か言う必要はないでしょう・・・

だがしかし!!
結婚イコール幸福というステレオタイプな思想は根強く残っており、
わたしも随分と頭を悩ませてきました。
ですので、今回は結婚にまつわるお話しをしたいと思います。

わたしはアラサーと呼ばれる年齢に差し掛かったあたりから突然、結婚願望が高まってきました。
結婚イコール幸せではないと頭では分かっていても、
なんだか無性に結婚したい!!なんでもいいから結婚がしたい!!
思春期の男子中学生がセックスを夢見るように結婚のことばかりを考える時期がありました。
あれは一種の熱病に犯されたような状態だったと思います。


それ故に、運試しと思い数々の街コンや婚活パーティーにも参加してみたのですがまったく得るものはありませんでした。
なかには途中で帰るというクズエピソードすら作ってしまったこともありました。
合コンにも精を出して参加しましたが友人関係に不協和音を生じさせるだけに終わりました。



そんなわけで恋人すらいないわたしですが、毎日楽しく暮らしております。
友人にも「結婚出来ない」ではなく「結婚しない」一派も出来たりして現代って自由で最高ですね。
最近になってようやく既成概念に捕らわれるのは良くないと思い始めました。
そういえば、最近行った美容院で読んだ雑誌には

「結婚なんて奴隷になりたいと志願するようなもの」

などと書いてあり震撼したりもしました。



わたしの正規ルートから若干外れてしまった人生、これからどうなるかは分かりませんが、
心穏やかに楽しく生きてゆけたらそれがわたしにとっての幸せなのではないかと思います。
結婚への憧れはいまだくすぶっておりますが、
一度きりの人生、思う存分楽しみたいと思います。
人生は短いですから、いまこの瞬間を大切にして生きてゆこうと思います。





あ!結婚スペシャルってことで、結婚にまつわる掌編小説を書きました。
短いので小説を読むのが苦手な方もトライしてみてください☆彡


「いびつな太陽」

 チャイム音が狭い事務所に響き渡る。時計を見ると十時半だった。わたしはようやく受話器から手を放す権利を得た。やれやれと椅子の背にもたれて身体を伸ばす。此処では一時間半に一度、十分の休憩がある。ちょろい仕事だと思われそうだけれど、このサイクルで休憩がないと、頭がおかしくなる。

 テレアポのバイトを始めたのは、ただ単純に時給が良かったからだった。夢も希望も失ったわたしにはぴったりの仕事だと言えるだろう。キャリアもなければ資格もない。様々なバイトを転々としてきたおかげで履歴書の職歴欄が足りなくなる。わたしは限りなくニートに近いフリーターだった。この仕事だって、母がバイト情報誌で見つけてきたものだ。どんな仕事に就いてもろくに続かないわたしに母は頭を悩ませているだろう。三十歳にもなって情けないものだ。母は二十代なかばあたりの頃、やけに熱心に結婚を勧めてきた。おそらく、仕事が続かないわたしの人生を立て直すには、結婚しかないと思ったのだろう。お陰で何度も頭の禿げた社長さんや、小太りの実業家とデートをする羽目になった。きっと童貞のまま大人になり、財力を得てから風俗デビューしたのだろうと思われる男性たちは、それなりに良いところがあったのかもしれない。けれど、その長所はまるでわたしには伝わってこなかった。ほどんどの男性と一度のデートで終わった。


「高望みしすぎなんじゃない?」

 子供をあやしながら百合香はオムライスをせわしなく口に運ぶ。三年前におめでた婚をした百合香は旦那とお姑さんの愚痴をひとしきり言った後で、

「早く落ち着いたほうがいいんじゃない?三十五過ぎると市場は枯渇するらしいよ」

 と、笑った。落ち着けるものなら落ち着きたいし、わたしだって軽自動車にベビーインカ―と書かれたステッカーを貼りたかった。でも、まるでその目途はまるで立たない。先週だって、八回目のお見合いパーティーに行ったけれど何の手ごたえもなかった。雑誌を読めばキャリアを取るか、結婚を取るか、みたいな特集が組まれているけれど、何のキャリアもなく、恋人すらまともに出来ないわたしは一体どのように生きれば良いのだろうか。

「いつか子供が出来たらって思って、禁煙にも成功したのになぁ……」

 と、呟くとすかさず百合香はぴしゃりと否定した。

「それ、マイナスがゼロになったレベルだから。あと、いい加減バンドのおっかけやめたら?さっきチラッと手帳見たけど週末の予定ライブばっかりじゃん」

「いや、これはわたしの生きがいだから」

 ふうん、と言うと百合香はバリバリとアイスティーの氷を噛み砕いた。困り果てたわたしは百合香の息子に笑いかけると、突然、火が付いたように泣き出した。慌てて百合香は息子を抱き上げてあやしたけれど、周囲の視線は冷ややかだ。子供がいるイコール幸せだということではない。こうしてたまに外食をして気分転換を図ろうにも気を遣う。本当に満たされた生活なんて、もはや何処にも存在しないように感じる。泣き止む様子のない二歳児を眺めているとわたしまで泣き喚きたくなる。氷が溶けて随分と味の薄くなったアイスコーヒーを啜りながら幸せの定義がどんどん分からなくなってゆくのを感じた。



〜おわり〜



inserted by FC2 system